海外に行くと日本は物価が安いなと感じることが多い。
食事をするにしても買い物するにしても日本の方が安いじゃないかと思う事が多くなってきた。
日本の輸出額のデータを見てみると、1980年頃から増えていて、貿易赤字だった2011年~2015年も2016年に黒字に転換している。しかしその内容は昔とは違ってきているだろうなと想像する。
数年前台湾か香港に行った時に、日本の高級スーパーよりも高い価格で美味しそうなお寿司が売られていたのを覚えている。買い負けといって昔は日本に入ってきていた質の良いサーモンやマグロが海外にとられているという話も聞くようになった。牛肉や豚肉も質の良いものは高く買ってくれるところへどんどん輸出されるだろう。最近の日本からの海外への輸出事例の資料を読んでいたら、ホタテやイクラを1社で何百億と輸出している所も数多い。
そうなってくると日本も海外と同じくらい高い値段を出さなければ美味しいものが手に入らなくなってくる。こういった輸出して稼ぐ会社が増えてくればその会社の人達は潤うし、生活レベルもあがってくるだろう。しかし、そうでない会社はどうなるのか?
周りの物価は上がってくるが、高く売れる場所を見つけていない会社にとっては給料を高くしてあげたくても高くすると会社が倒産する。そんな淘汰される時代がついにきているなと感じることが多いし、日本政府もその方向にシフトしているように感じる。でもそれは日本全体が経済的に豊かになるためにはそうしなければなら無い事だと思う。
アメリカのオイルサーディンの会社にイワシの原料を輸出しようと調査していたら、アメリカ国内にはオイルサーディンの工場は無くなっていた。(もし残っていたら是非教えてもらいたい。商談に行きます。)これは資源確保のためにイワシを禁漁にしたというのもあるだろうが、会社自体はあるが工場はベトナムやインドネシアに移していてそこで製造してアメリカ国内に持って来ているようだ。その方が賃金も安い所で同じようなクオリティの商品が出来上がるのだから、なんとも合理的でアメリカらしい感じがする。
去年はイタリアのシチリアへアンチョビ工場の見学に行った。そこで見たのは中国やトルコで処理された塩漬けのアンチョビが真空パックになってイタリア国内に入ってきてそれを瓶に入れオリーブオイルを入れてイタリア産になっていた。もちろんイタリア国内で全て製造しているものもあるが、価格の安いものはそのようにできているようだ。
それが悪いとは全く思っていない、しかし日本もものづくりの国として栄えてきて、これだけ生活水準があがり賃金が上がってきた中で同じような商売では成り立たない時代になってきていると感じる。電化製品についても国内製造商品の品質が悪くなったという声を聞く。それはそうだと思う。昔なら1万円で売るために、技術者が30分かけて作っていたとすれば、今は1万円で売るためには賃金が上がっているので10分で仕上げなければ1万円で売れなくなっていたりする。技術力が落ちたのではなくて、その商品にかける時間を短縮しなければ売れなくなってきているのだと思う。(これは完全に個人的見解です。)そのためには海外の賃金の安い所で製造するか、機械でできる部分は効率化するか、もしくは1万円ではなく3万円でも売れる商品を作るしかないのではないだろうか。しかし海外で製造してしまうと、その地にあった歴史や伝統が消えてしまう事になるかもしれない。どの地域も同じような景観になってしまうかもしれない。それは面白くないなと感じる。
だから会社の仕事も変えていかなければならない。目先の利益にとらわれず、十年先、何十年先にどうなっているか想像しながら、少しずつ会社の内容を変えていく。そしてそれは社員に求める能力も変わってくる。
昔ながらなものをこれから何十年、何百年その地域に残していくためにはどうやったら成り立つのだろうと考え、楽しみながら取り組んで行きたい。昔ながらなものが各地域に残ることで個性的で面白い未来が来ると信じているから。
三代目 下園薩男